読書におすすめ!これまでに読んだ小説・エッセイの全て

スポンサーリンク




174. 放課後

ミステリーメーカー東野圭吾のデビュー作にして乱歩賞受賞作品

あいかわらず東野圭吾ブームです。何冊かまとめ買いしたうちの1冊『放課後』を読んでみました。読んだあとに知りましたが東野圭吾のデビュー作でした。第1刷は1988年!どうりで少々文章が若いわけだ。その後の作品と比較するとやや深みが少ない気もしますが、もちろんダメという訳ではなく、全然楽しく読める、乱歩賞も受賞したミステリーメーカー東野圭吾らしいミステリーでした。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

舞台はとある女子校、主人公はそれほどやる気の無い数学教師前島です。物語は前島が何者かに殺害されそうになるところから始まります。しかも今回で3回目。さすがに身の危険を感じた前島は警察に通報しようと校長に相談しますが、学校の評判を気にする校長からはもうしばらく様子を見るようにいいます。そんな中、生徒たちから嫌われていた生活指導の村橋が殺害されます。しかも外部から侵入不可能な密室で。殺害の動機は?自分が殺されそうになったことと因果関係はあるのか?密室トリックの謎は?捜査は予想外に混迷を極めます。そんな時、まさかの第二の殺人が起こったのでした。

デビュー作とはいえ、さすが東野圭吾で、読み手の目線を自由自在に操ります。2重3重にもフェイクで覆い隠された真実 、散りばめられた伏線の絶妙な回収のされ方は他作品同様、爽快!のひとことでした。東野作品の共通点として、それまでの膨大なネタフリが、最後の数ページでザクッと落ちる大オチを持ってくるというパターンが多いと感じますが、今回もそんな感じです。っというよりデビュー作ですから、ここから始まったんですね。主人公や女子高生には少々感情移入出来ないところもありましたが、職員室の面々などは本当にキャラクターが良く描けています。スケベな教師、学校の評判だけを気にする校長、面倒くさいことを全てなすりつけたがる教頭など、実際に現実社会でもいそうな人ばかりでした。東野圭吾の原点が垣間見れる、読んでみてよかった作品でした。

放課後

171. 幻夜

名作『百夜行』の続編

幻夜』は東野圭吾の傑作『白夜行』の続編といわれている長編小説です。百夜行と連続で読んでしまいました。『幻夜』単体でも物語として成立していますが、できれば『百夜行』を読んでから本作を読まれることをオススメします。その方がより深みを感じ、数倍楽しめると思います。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

さて物語は1995年、主人公新海美冬と水原雅也が阪神大震災で被災したところから始まります。百夜行が1992年までの物語ですので、あれから3年という設定ですね。雅也の父は震災の直前、抱えきれない負債と不景気による工場倒産を苦に首吊り自殺してしまいます。父の死により得るはずの生命保険金は、突如現れた自称債権者である叔父により、奪い取られようとしています。まだ20代の息子、雅也に為す術はありませんでした。そんな夜、阪神大震災が訪れます。街は焼け野原になり、通夜に出席して、そのまま宿泊していた叔父も瓦礫の下敷きになっていました。しかし叔父はまだ息がありました。助けてくれといった目でこちらを見ています。雅也は何も言わず瓦礫で叔父の頭を殴り、殺しました。「大丈夫、この震災で多くの人が亡くなっている。この件はバレない」そう思った矢先、自分に対する冷たい視線を感じます。そう、その現場を唯一目撃していた人間こそ、もう一人の主人公、新海美冬だったのです。秘密をかかえた二人は、そのまま故郷を離れ、東京に逃避していくのです。

さすが東野圭吾でした。物語の7合目まで疑問がどんどん増殖していきますが、終わり間近で、それまで蓄積していた疑問を一気に解消する展開は流石の一言です。また百夜行ほどではないものの、この分厚い長編小説を一度も中だるみなく、読み飽きさせない素晴らしい文章力も抜群です。とにかく最後までワクワクしながらページをめくれる物語でした。ただ個人的にはラストシーンはあまり納得がいっていません。「えー、そういうオチなの??」って感じでした。百夜行と比較すると、今回は主人公二人、とくに雅也の心理が表現されてしまってるのが結果的に残念だったかも?という気がしました。このシリーズは3部作という噂もあります。まだ執筆を始めたという話は聞いたことがありませんが、なんとか3作目、読まして欲しいものです。

幻夜

<その他の東野圭吾本>

白夜行

ナミヤ雑貨店の奇跡

マスカレード・ホテル

170. 白夜行

東野圭吾の最高傑作

白夜行』は多くの東野圭吾ファンから最高傑作と評価されることが多い長編小説です。なんといっても分厚い。文庫本なのに厚み5cm以上あるんじゃないでしょうか。その厚さゆえ、なかなか頁がめくれず、積読状態のままになっている人も多いとか。私はたまたま宿泊出張があったので旅のお供に連れていきました。面白い!とまらない!移動時間やホテルで読みふけった結果、初日で半分くらいは読み終わりました。その時点で、間違いなく自身のベスト10入りは確信しました。次の日、羽田空港で読みかけの本をホテルに忘れたことに気づいたときは泣きました。当然、このままで終わる訳にはいかず、メルカリで2冊目の白夜行を購入し、先日ようやく読了しました。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

物語は1973年の大阪で、一人の質屋の親父が殺されたところか始まります。容疑者は次々浮かぶものの、結局事件は迷宮入りしてしまいました。白夜行は、その事件の「被害者」の息子である桐原亮司と「容疑者」の娘である西本雪穂の二人の事件後の物語です。二人の人生が交わることはありませんでしたが、その後も不思議と二人の周りには奇怪な犯罪が多く発生しました。何か因果関係があるのか?それともたまたまの偶然か?そうしていくうちに19年が経過しました。

本作では二人の心理は一切表現されません。読者も二人が関係あるのかどうか含め、真実については最後まで類推するしかありません。854頁の分厚い小説もページ数が少なくなるにつれて、この残り頁でどうやって結末を導くのだろうと少々不安になりながら頁をめくります。反面、800頁以上読んだあとでも、少し終わってほしくない気持ちも残ります。それくらい面白いミステリーでした。しばらく東野圭吾の虜になりそうです。読了後、「幻夜」という続編があることをしり、早速ポチりました。TV化、映画化もされてる様ですが、できれば原作から入っていかれる方がより深く味わえるのではないでしょうか。間違いなく傑作です。超絶オススメです。

白夜行

<その他の東野圭吾本>

ナミヤ雑貨店の奇跡

マスカレード・ホテル

169. 未必のマクベス

恋愛、収賄、マフィア、そしてシェイクスピアなど様々な要素が詰まった長編小説

未必のマクベス』は早瀬耕の長編小説です。結構評価が高かったので読んでみました。噂に違わぬ良書でしたね。面白かったです。ジャンルでいうとハードボイルド小説になるのかな。(ハードボイルドの意味は未だいまいちわからないけど)ちなみに著者が長編小説を書いたのは22年ぶりとか(すごい執筆間隔!)。単行本のときはあまり売れなかったらしいですが、文庫本になってから火がついたそうです。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

IT企業の管理職中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。バンコクでの商談を成功させた優一は、帰国の途上、マカオの娼婦から予言めいた言葉を告げられる。「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。その直後、彼は突然会社から香港子会社の代表取締役への出向を言い渡される。だがそれは決して栄転ではなく、片道切符の恐ろしい会社の罠だった。亡命、失踪、横領など自身の会社の闇事情を知った彼は、自らをシェイクスピアの戯曲に登場するマクベス王になぞり、仕掛け人に戦いを挑む。しかしシェイクスピアの戯曲の終末は、、、

正直シェイクスピアの「マクベス」を読んだことはありませんが、読んでなくても十分楽しめます(読んでるともっとおもしろいかも)。物語のステージは香港、澳門などが中心で、その中で付属品として登場するキューバリブレ、ベイ・シューが歌うジェームス・ブランドのカバー曲、数学の暗号などがいちいちかっこいいです。偽造パスポート、亡命王子、全身整形、殺し屋、失踪など現実離れしたでき事が次々と発覚する中、一会社員がよく冷静に対応できるな…と若干冷静な目で読んでた節もありましたが(笑)、分厚い小説にもかかわらず、残り頁が少なくなっていくと、まだもうちょっと読みたい感が残りました。ただ結構突飛な展開もあるので、もしかしたらちょっと読み手を選ぶ本かもしれません。ちなみにダイエットコークのキューバリブレってどんな味なんだろう。

未必のマクベス

166. マスカレード・ホテル

犯人が気になりすぎて、一気読み

マスカレード・ホテル』は東野圭吾が2011年に発表した長編ミステリー小説です。最近特に映画化で話題になっていたので、空港の書店で見かけて選んでみました。読み始めたらもう、全ての移動時間と家での時間を使って一気読みしてしまいました。とにかくテンポがいいですね。あと純粋に犯人が気になる。娯楽としてばっちりなエンターテインメント小説でした。映画の影響か、主人公がキムタクと長澤まさみに見えてしまいます。もちろん小説の方がキャスティングより先ですが、あの二人なら実写化してもバッチリはまるんじゃないでしょうか。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

物語の舞台は都内の超高級ホテルです。警察によれば、都内で最近、連続殺人事件が発生している。その4件目の殺人事件がこのホテル起こる可能性が極めて高いことが判明。しかも10日以内に、である。ただし容疑者も狙われている人物も現時点では一切不明。わかっていることはこのホテルで殺人が行われようとしているということだけであり、よって容疑者は宿泊客、ホテル従業員及びホテルに出入りする業者の全員であるとのこと。そういった事情からはホテル側は、潜入捜査官として5名の刑事を受け入れることを承諾する。直接宿泊客と接するフロントホテルマンには新田という30代の刑事が配属され、その新田の指導係として優秀なフロントクラークである山岸尚美が任命された。全く別の世界で生きてきた二人は、当初は衝突ばかり繰り返していたが、次第にお互いの高いプロ意識に気づき、事件解決に向けて協力しあうようになる。

東野圭吾のミステリーは様々な伏線が張られるので、色んな人間が犯人の可能性があると思えてしまい、僕は最後まで犯人がわかりませんでした。それだけに続きが気になり、結局一気読みしてしまうほど面白かったです。なんだかんだで本棚の東野圭吾のシェアが拡大中ですね。あと読了後に映画版キャストを確認して、「あぁこの人が犯人ね」ってほくそ笑んでしまいました。

マスカレード・ホテル

165. 人間椅子

短編小説No.1

人間椅子』は江戸川乱歩が1925年に発表した小説です。江戸川乱歩というと小さい頃に名探偵明智小五郎シリーズをよくテレビで見ていた記憶があります。変装の名人明智小五郎がクライマックスで正体を晒すシーンがお決まりでしたね。さて本小説はわずか30頁強の短編小説です。本当に短時間で読めてしまいます。ただ読了後のインパクトはとんでもないものがあります。芥川龍之介の「羅生門」や「鼻」、森鴎外の『高瀬舟』なんかも代表的な短編小説ですが、インパクトでいえば、それらを遥かに凌ぎます。他の長編小説も含め、おそらく数年後により記憶に残っている物語はこの『人間椅子』でしょう。今のところ、僕の中で短編小説No1です。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

本作は女性作家の佳子ととある椅子職人の物語です。ある日、佳子の元に一通の匿名の手紙が届きます。普段ならファンレターの一つとしてそこそこに読み流すところですが、その手紙の内容はファンレターではなく、全く見ず知らずの椅子職人からのある罪に対する懺悔の手紙でした。なぜ自分にそんな告白をするのか解せぬまま読みすすめていくと、そこには佳子が今までに考えたことも無いような吐き気がする罪が告白されているのでした。

この物語を読んで、江戸川乱歩という人はどんな性格だったんだろうと、興味を持ちました。読了後の先入観としては、かなり偏屈だったり、意地悪だったんじゃないか?といった予想です。それくらい読者を弄ぶ小説だったからです。実際にwikiなどで調べてみると、若い頃はかなりの人嫌いだったそうですね。学校なんて大嫌い、病室のベッドの上とかがこの上なく居心地がいい、納得行かずに何度も連載中絶など。やはり変な人でした(笑)戦時中にお酒を覚えたこともあり、戦後は人が変わったように人付き合いできるようになったみたいですが、本作はまだ戦前の「変な人」時代の乱歩作品であり、本作を読めば私と同じ様に作者に意地の悪さを感じつつ、悔しいけど興味を持ってしまう人も多いんじゃないでしょうか。

人間椅子

164. 永遠の0

英霊たちをもてはやす必要はない。ただ敬おう。

永遠の0』は太平洋戦争、ゼロ戦、特攻をテーマにした百田尚樹のベストセラー小説です。販売部数は300万部を突破したとか。TVドラマ化や映画もしてますのでご覧になられた方も多いかもしれませんね。僕もTV版はちょっとだけ観ていたので、なんとなくのストーリーは察してましたが、最後まで観てなかったので改めて文庫本を読んでみました。なんでこんな事がわかるの?というくらい各地での戦闘状況やゼロ戦の仕様などが詳細に描かれており、相当な量の取材のあとが伺いしれます。そしてこの物語を通じて、一人でも多くの日本人に、先の戦争で行われた最悪の戦術「特攻」というものの真実を伝えたかったのだなと感じました。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

物語は佐伯健太郎と姉の慶子の祖母が亡くなるシーンから始まります。祖母が亡くなったあと、祖父から「実は自分は本当の祖父ではなく、本当の祖父は特攻で亡くなったのだ」という真実を告げられます。2人は自分たちの本当の祖父がどんな人だったのか?に興味を持ち、数少なくなった祖父と共に戦った人達を、順次訪ねてまわります。祖父についての評判は好悪様々でした。ただ意見が一致していたのは祖父はその時代としては珍しく、とにかく「生きよう」としていたということ。今日では当たり前かもしれませんが、当時の日本ではそれは「臆病者」「卑怯者」と見做されるのでした。

物語は十二分に面白いです、特に後半が。ただ著者は、国を思い、自らの命を投げ出した兵士達が、戦後、マスコミや一部の学者により「殺されても仕方がない残虐非道な日本兵」といったレッテルをはられていたことに耐えきれず、兵隊達の汚名を晴らす為に、この本を書いた様な気がします。そして多くの人に真実を知ってもらうために、渾身の力で面白くして、出版したのではないでしょうか。多くの帰還兵が帰国後、ひもじい思いをしたそうです。それって何かがおかしい気がしませんか?この本が多くの人に読まれて本当に良かったと思いました。まだ未読の方はぜひ。

永遠の0

163. 真珠夫人

韓流ドラマの様に高速に展開する通俗小説古典

真珠夫人』は大正九年に発表された菊池寛の新聞小説です。巻末解説の川端康成も言葉を借りると大正時代の「通俗小説」になります。ある年齢以上からは、どちらかというと昼ドラのイメージが強いですね。当時、多くの奥様方がハマっていました。僕は既に働いていたので昼ドラは観てませんでしたが、当時はかなりブームになっていたので当然タイトルはしっており、また当時ハマってた奥さんからも内容を聞いていたので、大体のイメージは持っていました。ただ結論からいうと小説と昼ドラはかなり内容が違います。読了後にwikiで調べましたが、昼ドラの方はかなり内容が脚色されてたとか。ですので昼ドラを観ていた方も、新鮮な気持ちで読むことができると思います。

<<下に続く>>

スポンサーリンク

物語は大きく前編と後編に分かれます。前編は主人公瑠璃子に突如訪れた悲運がメイン、後編はその後、妖婦と化した瑠璃子と、瑠璃子に関わった人達の物語です。特に後半の妖婦時代は、極めて傲慢な貴婦人となります。しかし、それでもどこかに憎めず、魅力がある不思議なキャラクターでした。

新聞小説という特性からか、毎話3〜5頁くらいのまとまりで構成され、読者を飽きさせない為にテンポよく物語が展開していきます。まるで朝ドラや昼ドラを観てるような感覚で読むことができます。大正時代の物語ですので、旧字体や古い言い回しも多いですが、菊池寛の洗練された表現力のためか、全く古くささを感じず、下手な現代の小説より遥かに読みやすいです。古典として長く読み続けられる物語は、やはり文章の美しさが格段に違いますね。

小説や映画にはいろんな「面白い」があると思いますが、「真珠夫人」は通俗小説ですので、韓流ドラマ的なおもしろさという形容が一番適しているかもしれません。毎回毎回ハラハラしたり、「このあとどうなるの?」と続きが気になって仕方がありません。かといって決して軽薄な内容ではなく、きっちり古典としての深みも持ち合わせている小説です。フォロワーさんに薦めて頂いて読んでみましたが、とても良かったです。wikiはあらすじを書きすぎているので、できれば前情報無しで読んでみて下さい。おすすめです。

真珠夫人

162. 男ともだち

きっと好き嫌いがハッキリわかれると思います

男ともだち』は千早茜の2014年の小説です。なんか共感できる人、出来ない人が極端に分かれる小説だろうなぁ…と思います。千早茜の入り口は尾崎世界観との共著『犬もくわない』だったんですが、あの本のザラツキ感が好きだったので、2冊目を読んでみました。千早茜は、こじらせ女子の描き方がとても上手いですね。あと「男はこう見られてるんだなぁ。。」「男をよく見てるなぁ」とつくづく思います。

さて、物語は、お互いに熱量が無くなりつつ、とりあえず一緒に暮らし続けてる恋人と、自分が都合のいいときだけ連絡してくる妻子持ちの医者、そしてなんとかイラストレーターの仕事でメシを食っていけるようになった主人公カンナの3人から始まります。

ちゃんと恋人もいて、まぁ褒められたことではないけれど愛人もいて、仕事もようやく軌道に乗りはじめたのに、何かいまひとつ物足りなさを感じてるカンナ。そんなカンナにある日、大学時代の友人、ハセオから7年ぶりに連絡が入ります。

女紹介して

相変わらず!

二人の間に7年の時差は無く、あっという間に軽口を叩き合える、昔の距離感に戻ります。女に不自由しないハセオ。何度も一緒に寝泊まりしたハセオ。しかしカンナはハセオとは一度も一線を超えた事がありませんでした。ハセオはカンナの”男ともだち“だったのです。あの頃は。

161. 食堂かたつむり

人に薦めたくなる本

食堂かたつむり』は小川糸の2008年のデビュー作です。物語は、主人公倫子のある1日から始まります。ある日、インド人の彼氏が待つアパートに帰ると、そこには家具も、冷蔵庫も、照明も、カーテンも、そして貯金とインド人も、何も残っていませんでした。まるでお部屋探しの内見で訪れた様な空っぽの部屋。

ここは本当に私の部屋か?

唯一残っていたのは、祖母の形見であったぬか床だけでした。ぬか床以外、全てを失った倫子は、その日のうちに故郷に帰ります。帰り道、もう一つ失った物に気づきます。それは、彼女の”“でした。

口がきけないまま、故郷に帰った倫子は、ずっと反りが合わなかったスナックを経営するおかんに頭を下げ、1軒の蔵を借ります。そこで彼女は、昔なじみで愛する奥さんに逃げられた熊さんに色々助けてもらいながら、1日1客限定の食堂「かたつむり」をオープンします。

「かたつむり」は不思議な力を持っていました。直後に、料理を食べた者の願いが叶ったり、幸せが訪れたりするのです。熊さん、最愛の人を失った老婆、若きカップル、「かたつむり」は訪れた人を次々と幸せにしていきました。もしかしたら声の代わりに神様が授けてくれた力なのかもしれません。そんな「かたつむり」に、本当に幸せにしなければならない人が訪れます。。。描写がとても美しく、そしてほっこりした、人に薦めたくなる本でした。

スポンサーリンク

158. 西の魔女が死んだ

大人でもおばあちゃん家に帰った気持ちになれる本

西の魔女が死んだ』は梨木香歩の小説で、2008年に映画化もされている1994年の小説です。

新しいクラスに馴染めず、不登校になってしまった主人公のまいは、しばらく田舎のおばあちゃんの家で暮らすことになりました。

まいはえらいね」「まいは上手だね

おばあちゃんの穏やかで優しい手ほどきと、都会にはない豊かな自然の中で、まいは次第に自信を回復していきました。

そうして立ち直り、大好きなおばあちゃんの元を去る直前に、まいはおばあちゃんと些細なことで大げんかをしてしまいます。

仲直り出来ぬまま2年がたったのち、届いたのはおばあちゃんの訃報でした・・・

自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、何も恥すべきことはありませんよ。サボテンは水の中にはえる必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか。

おばあちゃんの教えは、いつも優しく、温かかった。

全部で200頁くらいでしょうか。できれば小学生か中学生くらい、もしくは学校に上手く馴染めないのお子さんに読ませてあげて下さい。

僕は「星の王子さま」よりこちらの方が好きでした。

156. 本屋さんのダイアナ

全ては本のようにはいかない。でもいつも本が力をくれる。

本屋さんのダイアナ』は柚月麻子の”大穴”と書いて”ダイアナ”と呼ぶ名を付けられたキャバ嬢の娘と、幼い頃から何の不自由なく行きてきた綾子の二人の成長を描いたダブルヒロインの物語です。

小3の時に同じクラスになったダイアナと綾子、お互い自分に無いものを持つ相手に惹かれ、すぐに無二の親友となります。

しかし時の流れや些細なボタンの掛け違いにより、二人はしばらくして別の人生を歩むことになります。

もう会うこともないのかな

二人は歩み寄る機会を見つけられないまま、大人になってしまいます。

この感覚、誰もが経験したことありますよね。

2人のヒロイン以外にも二人の両親や小学校からの幼馴染、大人になって出会う人々など、それぞれのキャラがしっかり立っているので、読む人によって感情移入するキャラが違うかもしれません。

僕はダイアナの母、ティアラが好きでした。

うちはバカだけど、そがうちの個性じゃん。誰にも迷惑かけないで生きてるだけで、十分うち、がんばってるもん。うちはうちじゃん。オンリーワンじゃん。

人におすすめできる小説でした。

155. 告白

恐るべき復讐

告白』は港かなえのデビュー作で本屋大賞受賞作品です。

何のプロローグも無く、物語の1行目から異様な雰囲気で始まります。

どうやらここは教室。

そして生徒に向けてしゃべってるのは担任。終業式の様です。

その教師は1ヶ月前に最愛の娘を亡くした。そして本日を持って学校を辞める。

教師は演説の途中で驚くべき告白をします。

愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです

物語は全6章で構成され、第1章では教師であり母親の森口の目線、続いて各章で犯人、その家族など様々な登場人物が自分たちの目線で事件の真相について語っています。

森口の衝撃の復讐方法とは…

でももし自分も娘がこんな目に合わされたら、同じ様な事を考えるかもしれません。

湊かなえの”読ませ力”凄いです。

他の作品も読んでみたくなりました。

スポンサーリンク

154. Aではない君と

最後まで吸い込まれ続ける少年犯罪の物語

Aではない君と』は少年犯罪の加害者側の親となってしまった家族の物語です。

建設会社のエリート営業マンの吉永。

数年前に妻とは離婚したものの、新しい恋人もでき、仕事も順調だった。

そんな吉永の人生は、元妻からの一報で一変する。

翼が…逮捕された…

元妻と暮らす一人息子が、同級生の殺害容疑で逮捕された。

「いったい何が?」

動機も、原因もわからないまま翼の元へ駆けつける吉永。

しかし、面会した息子は一切自分を見ようとせず、ただひたすら無言を貫くのみでした。

なぜ…

センセーショナルな少年犯罪事件のため、毎夜マスコミが騒ぎ立てます。

ヒステリックになる元妻。

会社にそんなことをストレートに言えるわけもなく、ただひたすら一人で苦しむ日々が続きます。

その後、何度も面会を重ねるも、ついに息子の口から事件の真相を語られることはありませんでした。そして親子は審判の日を迎えます。

「なぜ俺は、あの電話に出なかったんだ」

吉永は事件のあったあの日、息子からの電話に出なかったことを激しく後悔したのでした。

犯罪加害者の親というのは一体どんな気分なんでしょう。

でも自分に置き換えると、やはりどんなに世間から非難されても子供を守ろうとするかな。

得てして子供がグレる要因というのは、親の余裕の無さや過剰な愛情の場合が多いですよね。

目をそらせない吸引力のある小説でした。

お子さんをお持ちの方に是非。

153. おまじない

人生の転機に背中をそっと押してくれる魔法のひとこと

おまじない』は西加奈子の8人の女性の物語を詰め込んだ短編集です。

人生の転機に思い悩む女性たちが、物語の中で、思いがけない人からそっと自分の背中を押してもらえるような魔法のひとことを与えてもらいます

「あなたを救ってくれる言葉が、この世界にありますよう。」と著者のコメントが帯にあるように、もしかしたら読者の背中を押してくれるひとこともあるかもしれません。

個人的には「オーロラ」が好きでした。

ちょっと酸味のあるコーヒーを飲んだあとような、読後感です。

女性におすすめの本です。

152. 朝が来る

読了後、深い余韻が残る小説

朝が来る』は子を産めなかった女性“佐都子”と子を手放さなければならなかった女性“ひかり”、それぞれの生活とその後の運命を描いた辻村深月のヒューマンサスペンス小説です。

「なんだろう、この読後感は。」読了後、とても深い余韻がしばらく続きました。

メインテーマは「人を信じる」ということ、サブテーマは「不妊治療」と「特別養子縁組」です。不妊治療の苦しさや特別養子縁組という制度についての負の側面もリアルに描かれています。

男性としては「女性はそんな風に感じるのか」と考えさせられる部分も多かったですね。

物語は子を産めず、数年前に生まれたての赤ん坊を養子として引き取った佐都子の元への1本の電話から始まります。

電話口の女性はいいました。

子供を返して欲しいんです

前半は子供を引き取った佐都子とその家族の生活、後半は子供を生んだひかりの人生について描かれています。

おそらく大半の方は、ひかりの方に感情移入してしまうのではないでしょうか。

ごくごく普通の女の子だったひかりは、幼くして子を授かった事をきっかけに波乱の人生を迎えることになります。

いろんな人に裏切られた。

少なくとも、異常な精神状態の中でひかりはそう受け止めてしまいます。

親、恋人、恩師。

何も悪いことをしていないのに。

信じていたのに。

子を手放したストレス。

大切な人への望まぬ不義理。

私の何がいけないのか?

ひかりは幼いところも多々ありますが、それも含めてごくごく普通の女の子でした

そんな世間知らずの女の子がこんな経験をしたら、きっとこうなるよな…と思ってしまいます。

テーマが重いため、全員が面白く感じる本では無いかもしれません。

でも読了後、とても深い余韻が長く残る物語でした。

恐るべし辻村深月です。

僕は読んで良かったです。

できればお父さんに読んで頂きたいです。

興味がある方は是非。

151. もっとハワイバカ一代

プチハワイ旅行気分。そして行きたくなる。

もっとハワイバカ一代』は2010年に発売された『ハワイバカ一代』の続編で、2018年末に発売されたハワイマンガ旅行記です。

前作がなかなか楽しかったので、続編も読んでみました。

今回は娘ちゃんも登場です。

なんかこの本を読むと、この人と一緒にハワイに家族旅行にいってる様な気持ちになるんですよね。

そのあと、本当にハワイに行きたくなるんですが。

ベタなガイド本では見えない、ハワイの生活やあるあるがふんだんに盛り込まれていますので、ハワイ初心者や「最近ハワイご無沙汰〜」な方におすすめの本かと思います。

150. 漁港の肉子ちゃん

クライマックスにガツンとやられる

漁港の肉子ちゃん 』は2011年に発表された西加奈子の小説です。評判が良かったので「タイトル、凄いな・・・」と思いつつ読んでみました。

とにかく肉子ちゃんがガサツです。

デブで、ダサくて、だらしない肉子ちゃん。

何度も人に騙されてきた肉子ちゃん。

それでもまたすぐに人を信じる肉子ちゃん。

物語の前半は娘のキクリンの目線で、そんな肉子ちゃんについて描かれます。

貧しいながらも懸命に生きる肉子ちゃん。

意味不明な字解きをするくせに、表現力が乏しい肉子ちゃん。

すぐにオナラをするガサツな肉子ちゃん。

ぶぅぅぅっ」

でもクライマックスでそんな肉子ちゃんは、とても愛すべき人であったことがわかります

ちゃんとした大人なんてんがんも、いねぇて。

サッサンの言葉が刺さります。

肉子ちゃんとキクリンのそれぞれの優しさが泣けてきます。

最終的に二人のことが好きになっちゃう物語でした。

あと大阪弁もちょっと好きになります。

おすすめの1冊です。

148. 和菓子のアン

和菓子のアン』は2010年に発売された坂木司のデパ地下の和菓子店「みつ屋」を舞台にしたライトミステリー小説です。

主人公梅本杏子(通称:アンちゃん)は高校卒業と同時にデパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めます。

仕事を覚えていく中で、和菓子にはそれぞれに秘められた物語があることを知ります。

あのお客様はどういった気持ちでこの和菓子を?

個性的な同僚達と共に、それぞれの和菓子に秘められた物語から日常のささやかな謎を解き明かしていきます。

主人公の心理描写がとても面白く一気に読めてしまいます。

とにかくアンちゃんのキャラクターが秀逸。

ホッペが柔らかく、ややぽっちゃりらしいので日テレの水卜アナみたいなイメージでしょうか?

ミステリーというよりはデパ地下店員物語といった感じです。

あと読了後、きっと多くの人が和菓子が食べたくなると思います。

おすすめです。

147. 本屋の新井

本屋の新井』は2018年に発売された三省堂書店の現役書店員、新井見枝香氏のコラム集です。

POPへのこだわり、小説を届けられることの喜び、出版社担当との別れ、店の販売方針に対する苛立ち、書店員という生き物についてなどを素晴らしくも肩の力が抜けた文章力で綴っています。

この本のテイストは以下の「はじめに」に全て集約されています。

『書店で本が売れない時代になったけど、コラムを書くことでその状況を変えたいとは微塵も思わない。

もし書店が淘汰されちゃったら、まぁちょっと面倒くさいけど別の仕事を探すまで。

この本に苦境に立たされつつも本を愛する健気な書店員を期待してるなら、それは人違い。

極限までハードルを下げて、期待を捨てて、「なんかちがう」と感じながら読んでほしい。』

現役書店員がここまでぶっちゃけて語れるんですね。

面白かったですし、愛する本の紹介も素晴らしいです。

とても人に勧めたくなる本でした。ぜひ。

あぁ書店員さんと知り合いになって、色々語りたい・・・

146. ナミヤ書店の奇跡

どうか信じて下さい。今がどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしいのだ、と。ナミヤ雑貨店

ナミヤ雑貨店の奇蹟』は2012年に発売された東野圭吾の長編小説です。

逃亡中の泥棒3人組は、一軒の廃屋に逃げ込みます。

その廃屋はかつて、どんな悩みも一生懸命答えてくれる店主がいることで有名な「ナミヤ雑貨店」でした。

彼らが逃げ込んだ夜、永く無人なナミヤ雑貨店に一通の手紙が届きます。

それは33年前のある日から送られた手紙でした。

いたずら?でも何のために?

その後も次々と届く過去からの悩みの手紙。

かつて店主に救いを求めた多くの人達の手紙がなぜ今になって?

その夜は懸命に人の悩みに答え続けた店主の最期の願いが叶った、奇跡の夜でした。

「どうか信じて下さい。今がどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしいのだ、と。ナミヤ雑貨店」

第二章の「夜更けにハーモニカを」は泣けます。

143. 君の膵臓をたべたい

途中から涙が止まらない

君の膵臓をたべたい』は2016年の本屋大賞2位作品です。

最初「なんちゅうタイトルや…」と思いましたが、読んでみたら号泣でした。

高校生のヒロイン桜良(さくら)は不治の病に侵され余命1年を切っていました。

しかし自分の病気の事を誰にも告げず、残された日々をとにかく普段通りに明るく生きようとします。

そんな折、たまたま病院で桜良と出会った”僕”は桜良の秘密を知ってしまいます。

「誰にもいわないで」

“僕”は彼女の願いを承諾しました。

親友やクラスメイトと楽しくはしゃぐ桜良をみて、ふと僕は聞いてしまいました。

「君って、本当に死ぬの?」

「…。死ぬよ」

途中から涙が止まりませんでした。

できれば何の情報も入れずに読んでみて下さい。泣き小説が好きな方にオススメです。

142. 劇場

苦しい、痛い、切ない、わかる

劇場』は又吉直樹の2作目で、周囲では『火花』より圧倒的に高評価です。

売れない演出家の永田とその彼女沙希の物語。

評価されないストレス、嫉妬、劣等感を抱え続ける永田。

ただひたすら永田を愛し、認め、支えつづける沙希。

そんな二人の関係は、どんどん傷つけあってしまいます。

自分の不甲斐なさを自覚しながら、沙希にあたってしまう永田の弱さや醜さが切ないです。

「嫉妬という感情は何の為に人間に備わっているのだろう。何かしらの自己防衛として役に立つことがあるのだろうか。」

終始灰色感が漂う素晴らしい作品でした。

もう芸人という偏見はいらないかな。

太宰治とかが好きな方におすすめです。

141. 星の王子さま

小学生の頃に読みたかった。お子様向けに。

小説に登場した曲や絵が気になることってないですか?「フランダースの犬」で主人公が見たかった絵の様な。

先に読んだ『君の膵臓をたべたい』でヒロインが主人公に勧めた文庫本として登場していたので『星の王子さま』を読んでみました。

星の王子さまは故郷を離れて、いろんな星を旅することになりました。

そこでいろんな大人に出会いました。

自称王様、うぬぼれ屋、常に忙しい実業家。

みんな大人なはずなのに、王子様には理解できない不思議な人達ばかりでした。

「おとなって、とってもとっても、おかしいんだなぁ」

旅する中で王子様はとある地理学者に出会います。

そこで「はかなさ」について学びます。

いつか滅ぶものははかないのです。

ふと自分が故郷に残していった、1本のわがままなお花の事を思い起こしました。

お花はいつか散ることを知ります。

「あの花をひとりにしては、いけなかったんだ」

もし小学生くらいのお子さんがいれば、是非プレゼントしてあげて下さい。

読み聞かせてあげてもいいですし、ほぼひらがなで綴られいますので2年生くらいであれば十分読めると思います。

138. お友達からお願いします

お昼休みや旅のお供に

お友だちからお願いします』。三浦しをんのショートエッセイ集です。身構えずに寝転びながら読める本です(いい意味で)。本人のキャラがいいんでしょうね。何気ない話ばっかりなんですけど読んでて飽きないです。内容は本当にくだらない、よくある日常です(いい意味で)。でもなぜか1話読み終えるごとにちょっと前向きになれます。

どこからでも読める本なので、お風呂とか、職場のお昼休みとか旅のお供とかにピッタリです。

無心で開いて、読みたいとこだけサーっと読んで、バタッと閉める。そんな感じで楽しめる本でした。

136. 82年生まれ、キム・ジヨン

小説の形をした韓国社会への告発本

82年生まれ、キム・ジヨン』は韓国で100万部売れ、映画化も決定したベストセラー小説です。小説といいつつ、現実社会で韓国の女性たちがずっと経験してきたセクハラや男尊女卑の深い闇の実情を訴えている告発本だと思います。タイトルに「82年生まれ」と付けてるのも「リアルタイムな出来事なんだよ!」と暗に言いたかったのかもしれません。

ですのでストーリー的な面白さを期待するのはちょっと違うかもしれません。僕は小説と思い込んで読み始めたので「これの何が面白いの?」と思いながらもそのまま読み終えてしまい、あとがきでやっと理解できました。

韓国でこれだけ共感されるということは同じように苦しんでしる女性があまりにも多いということなんでしょうね。興味がある方は是非。

135. 1ミリの後悔もない、はずがない

学生時代を思い出す

1ミリの後悔もない、はずがない』。面白かったです。

登場する人物それぞれの目線で現在や過去の恋や生活が綴られた5話短編集です。特に「西国疾走少女」は傑作でした。

胸にピキっと刺さるような実在感が、昔の恋愛をフラッシュバックさせます。

すれ違ったり、上手くいかなかったり、昔と比べたり…

みんな後悔しています。

時に後悔を懐かしんだりしつつ、生きてるんですよね。

大人が好きな本だと思います。

125. 火花

悲しくも可笑しい、二人の芸人の物語

火花』はピース又吉直樹の芥川賞作品です。芸人の偏見無しで読んでみました。やっぱ面白かったです。

二人の売れない芸人の物語です。物語全般を通して太宰治の様な曇天感を漂わせつつ、少し悲しみを含んだ笑いがたっぷり散りばめられています。それらの笑いが二人に起こる数々の悲しい出来事をより一層を引き立てます。

きっと自分を含め何人も悲しい芸人を見てきたからこそ書けた小説ではないでしょうか。何となく北野映画に通ずる物を感じたり、文学感もありで僕は変な恋愛物より遥かに好きな小説でした。おすすめです。

123. 老後の資金がありません


60歳手前で貯金がどんどん無くなっていく物語。前半は秀逸。

老後の資金がありません』。下の子供が専門学校を卒業し、ようやくお金の悩みから開放されると思った矢先に、娘の派手婚、舅の葬式、姑の生活費などでみるみる貯金が減っていく。挙句の果てに自分と旦那が同時期に失職してしまう。「私、何か悪いことしたか?」と言いたくなるほど負の連鎖に陥る主婦の奮闘物語。前半のテンポが秀逸。

120. わるい食べもの

絶妙な毒がスパイスな食べものエッセイ集

わるい食べもの』は千早茜の食べものをテーマにしたエッセイ集です。尾崎世界観と共著の「犬も食わない」が面白かったので最新本を読んでみました。毎回のテーマとなる食べものについて、好きとか嫌いとかでなく自己体験に絶妙な毒気を織り交ぜて綴っています。カレーの匂いを嗅いでカレーパンが食べたくなるという気持ちはとても共感できました。

余談ですが著者が自分と同時期に京都で学生時代を過ごしていたことを知り、ちょっと勝手に親近感を覚えました。

110. 犬も食わない

脱ぎっぱなしの靴下、人肌。ほぼリアルと錯覚させる恋愛小説

犬も食わない』は30代重役秘書の福と年下ダメ男大輔の恋を尾崎世界観と千早茜が男女それぞれの目線から交互に描く物語です。なんでしょう、面白かったです。当たりかな。

30代前後の恋人にありがちな日々が描かれています。ドラマチックな事は起こりません。多少結婚にあこがれを持ちつつも現実的に難しそうだと理解してる福と常に言葉足らずでその日暮らしを望む大輔。脱ぎっぱなしの靴下、理解できない相手の言動、突発的につく嘘。

友人にいそうな二人です。どちらかというと現実から離れる小説ではなくリアルと錯覚させるような小説でした。おすすめです。

108. 平成くん、さようなら

今の東京を感じる

平成くん、さようなら』は社会学者・古市憲寿の初小説です。

おそらく著者自身をモデルにしたのではないかと思われる主人公「平成くん」は、ある日突然恋人に対し平成が終わることに伴い、自身も安楽死したいと告げます。自身の誕生日が平成元年1月8日である以上、平成の終わりと共に自分も消えてしまっても良いのではないかと。

安易に死を選んで欲しくない恋人は、主人公が心変わりするようにやさしく説得を続けます。

最終的に平成くんが選ぶ結論とは。。。

物語全体から”今の東京”が色濃く感じられます。Google HomeやUberも頻繁に登場しており、きっと著者もこんな暮らしをしているのでしょう。唯一のフィクションは日本で安楽死が広く認められているという設定くらいでしょうか。

序盤はいい感じかなと思いましたが、後半やや物足りなかったです。読みやすい本ではありますので興味ある方は移動時間にでも読まれては如何でしょうか。

107. 女生徒


自分が女生徒となり瞑想している様な物語

女生徒』は太宰治中期の短編小説です。『人間失格』がとても面白かったので呼んでみました。相変わらず”浪のまにまに”など美しい形容詞が散りばめられ、小気味よいペースで展開する太宰治らしい本でした。

内容は一人の女学生の脳内を覗いている様な内容です。見たもの、感じたことが矢継ぎ早に現れては消えていきます。感受性が高い10代の女子はきっとこれくらい色んな事を考えて、忘れて行くのでしょう。この世代の女性が思うことや、10代特有の情緒不安定さが上手く表現されています。我々世代からすると少々懐かしくも有り、娘を見ている父親の心境になりました。

あとこの物語の読み手は「瞑想=マインドフルネス」にとても良く似た感覚を覚えます。おしゃべりな脳を1歩離れて冷静に見ているもう一人の自分。そんな不思議な感覚にさせてくれる物語でした。(参考:瞑想をはじめてみた

105. 人間失格

この本に出会えてよかった

人間失格』は太宰治の小説です。今回初めて読んでみました。内容、表現の美しさなど全てにおいて心の底から出会えてよかったと思える本でした。

誰もが感じたことがある人に対する恐怖、道化を見透かされた時の恥ずかしさ、怖さから目をそらすために安易なものに流れていく若さ…

主人公葉蔵は聡明であるが故にそういった”恥”を人一倍感じてしまい、また上手く立ち回れなかった自分をどんどん卑下していきます。

こう書くと暗い本の印象を与えるかもしれませんが、単純に暗い本という訳でもありません。

僕はあまり同じ本を何度も読みませんが、この本だけは毎年1年の終わりにこの本を読み返すことにします。おすすめです。

104. 羅生門

渋みがある読後感

羅生門 蜘蛛の糸 杜子春 外十八篇』「羅生門」を初めて読んでみました。こちらも思いの外短い物語でしたね。10分くらいで読めます。

何でしょう。。。100年前の「世にも奇妙な物語」の様な感じでしょうか。

芥川龍之介の小説はどれも仏教の世界観の中に人間のエゴやずる賢さを融合させることで「蜘蛛の糸」に代表されるような、ちょっと渋みがある何とも言えない後味が残ります。

老人になった頃に読み返すと、この渋みの読後感が分かるようになるかもしれませんね。

103. こころ

物語のテンポが…

こころ』は夏目漱石の小説です。amazonでも素晴らしい評価がついているので読んでみました。

主人公が鎌倉で出会った”先生”のことを気に入り、先生の家に入り浸るようになります。段々の距離が縮まる主人公と先生。しかし先生には常に何かを隠している気配がありました。それは自分だけでなく先生の奥さんにも。先生が誰にも打ち明けられない秘め事とは…

これだけ評価が高いので名作なのは間違いないはずです。しかし個人的にはどうも物語のテンポが遅く感じ、残念ながらあまり楽しめませんでした。こればっかりは個人差があるので仕方ないかなと思います。

ひとつ良かったのは今回、太宰、漱石、鴎外、芥川、谷崎の代表作を読んでみて、日本酒やワインの飲み比べの様に5人の名著の読み比べが出来たことです。それぞれの”味”の違いがとても良くわかりました。お酒同様、口当たりの良い酒が自分に合うとは限りませんので、もしかしたら後日漱石ファンになってるかもしれません。純文学の入門としては良い読み方だったかなと思います。

102. 鍵


これが谷崎純一郎ワールドか

』は谷崎潤一郎の小説です。友人に勧められて読んでみました。amazonのレビューでも賛否両論ですが、僕はシンプルに面白かったです。

夫婦それぞれが内緒でつけている日記を、途中から相手に覗き読まれていると知りながらも書き綴る奇妙な物語です。そして物語が進むに連れて自分自身もこの夫婦のやり取りを覗き見ている様な不思議な感覚に陥ります。これが谷崎潤一郎ワールドなのでしょうか。

男女が交互に心理を語る描写は江國香織の「きらきらひかる」を思い出します。実は「鍵」も「きらきらひかる」も勧めてくれたのは女性でして、もしかすると女性の方がより共感できる本かもしれません。

101. 高瀬舟

ブラックジャック

山椒大夫・高瀬舟』は森鴎外の有名な短編小説2作です。森鴎外の作品は1度も読んだことがなかったので調べてみた結果「高瀬舟」が一番評判が良かったので読んでみました。下記レビューは高瀬舟についてです。

まず想像以上に短編です。内容はブラックジャックに出てきそうなお話です。読んだ後味も似ています。そういえば森鴎外も手塚治虫も医者でしたね。

何人もの罪人を高瀬川を下り護送してきた同心羽田庄兵衛。ある日庄兵衛はそれまでには見たことがない程安らかな顔をした罪人喜助と出会う。庄兵衛はなぜ護送される罪人がそれほど安らかな顔をしてるのか不思議に思い、つい喜助に罪人となった理由を尋ねてしまう…

すぐに読めるお話ですので一度読まれては如何でしょうか。

86. 僕は愛を証明しようと思う。

恋愛奥義伝授

ぼくは愛を証明しようと思う。』は非モテの為の恋愛マニュアル本です。ホリエモン著書の「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った (角川書店単行本)」で同著者の「外資系金融の終わり―年収5000万円トレーダーの悩ましき日々」が面白いと褒めてたので読んでみました。

モテモテの永沢氏が女子を口説くテクニックをあえて「ヒットレシオ」「タイムコンストレイントメソッド」等の経済用語、ビジネス用語に置き換えて「恋愛工学」として非モテの男子にレクチャーしていきます。実際に使えるかは?ですが、読んでると不思議とニヤッとしてしまう本です。

80. 読書間奏文

SAORIの世界観がとても気持ち良い

読書間奏文』はSEKAI NO OWARIピアノ兼ステージ演出のSAORIが、本名の藤崎彩織名義で連載していたエッセイを纏めた本です。

エッセイのテーマは毎回1冊の本で、その本に登場する一場面と自身のこれまでの経験をオーバーラップさせて、共感した気持ちなどを綴っています。

著書『ふたご』で直木賞候補作品にもなった彼女の文章はとてもキラキラしていて、sekai no owariの世界観そのものです。装丁も美しいので是非一度書店で手にとって頂ければ。

ちなみにこの本を読むとSEKAI NO OWARIが聴きたくなります。

70. R帝国

傑作!怖い!面白い!

R帝国』は中村文則のベストセラー近未来小説です。

仮想国家の話なものの、なぜか所々で、我々の現実世界を感じさせます。そして物語が進むにつれて明るみになる国家の暴走は、まるで日本の近未来の様に思え、不思議なデジャヴ感と恐怖を感じます。

本当に近い将来、日本はこうなってしまうかもしれないと思わされる程素晴らしい小説です。

69. 世にも奇妙な君物語

旅のお供にでも

世にも奇妙な君物語』は『桐島、部活やめるってよ』作者の浅井リョウの短編5話物語集です。

「とにかくオチが凄い!」の帯広告に引かれて読んでみました。ハードルが上がったこともあり、「まぁまぁかな?」が読み終えた感想でした。

テイスト的には『世にも奇妙な物語』に似ています。

どの話もきっちり予想外な展開に落ちる短編集なので、ちょっとした空き時間の楽しみによいかもしれません。

68. コンビニ人間

ファンタジー

コンビニ人間』は第155回芥川賞受賞作品で2018年のベストセラーです。

コンビニバイト歴18年、彼氏なしの36歳の主人公はコンビニで働いている時が一番生きていると実感できる程のコンビニ人間である。

そんな主人公のバイト先に婚活目的の新入り男性がやってきて、彼女のこれまでのコンビニ人間人生に影響をもたらす…

67. 蛇行する月

それぞれのキャラになぜか共感してしまうところがある

蛇行する月』は小説家、桜木紫乃のベストセラーです。

計らずも儘ならぬ人生となり、北の大地でもがきながら必死に生きる5人の女性が、過去に駆け落ちで故郷を捨て、東京で暮らす同級生の順子に引き寄せられていく。

極貧の生活を送りながらも、“幸せ”という彼女に5人がそれぞれ感じることは…

66. ちょっと今から仕事やめてくる

仕事がつらい貴方向け

ちょっと今から仕事やめてくる』は仕事や環境に疲れた方におすすめの小説です。

ブラック企業に務める主人公。何もかもに疲れ果て、朦朧とした意識の中、ホームから飛び込もうとしてしまいます。間一髪、たまたま居合わせたかつての同級生“ヤマモト”に助けられる所から物語は始まります。

しかし“ヤマモト”とは一体…

40. そして、バトンは渡された

面白かった!

そして、バトンは渡された』は血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった十七歳の女の子のお話。

「きっとつらい思いをしてる」と周囲は同情するが、彼女は常にどの両親にも愛され、また彼女も愛していた。

ラストはほっこり涙させてくれる名著です。

35. 女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと

母目線、親目線。子を持つ親は共感する。

女の子が生きていくときに、覚えていてほしいこと』は漫画家西原理恵子が、成長する娘を横でみながら今娘に思うこと、親子というよりは人生の先輩としてのアドバイスを、この本を通して伝えようとしているエッセイです。

決して過保護にはしなかったものの、娘に対する強い愛情は端々に感じられ、また我々読み手自身も親として共感でき、人間としては母の愛に包まれるようなとても温かい本です。

19. 妻に捧げた1778話

ドキュメンタリーと物語を同時に読んでるような感覚

妻に捧げた1778話』は余命一年と宣告された妻に対し、小説家である著者が毎日新しい短編物語を書き続けた実話の話です。創作した物語は5年間で1778話にも上り、その中から著者が選んだ19話に妻との思い出を新たに書き下ろした本です。「アメトーーク」でカズレーザーさんが紹介して一気に有名になりました。

特に後半の病状が悪化し、もはや反応すら出来なくなってきた妻に、それでも物語を読み聞かせるシーンはとても切なさを感じます。そして最後話では自然と涙がこぼれます。

もし家族が病気になってしまったら、もう一度読み返したいです。

スポンサーリンク

シェアする

フォローする